ヤエヤマアオガエルとアイフィンガーガエルの変態について
今回はオタマジャクシがカエルに“変態”する時間についての考察です。
※ここで言う変態とは夜道にいる怪しい人ではなく、動物の生育過程において、大きく形態を変えることを言いますよ!
石垣島に生息する固有種であるヤエヤマアオガエルとアイフィンガーガエルについて、上陸してからしっぽがなくなるまでを観察した記録です。
特にアイフィンガーガエルは図鑑を見てもオタマジャクシのサイズや期間は載っていても、変態期間についての詳しい情報はあまり見つけられませんでした。
せっかくなので、情報として発信したいと思います。
ヤエヤマアオガエルは石垣島、西表島に生息する固有種です。
アオガエル科に属し、樹上棲のカエルで繁殖シーズンのピークは12~3月の寒い時期。
この抱擁シーンが見たくて2022年3月に毎日のように山に通いました。
(浮かれてハブに噛まれて人生が変わると言っても過言ではない出来事も起こりましたが、また今度紹介します。)
産卵シーズンは12~3月と文献にはありますが、なんと2024年の8月は大雨のあと産卵しているではありませんか。
産卵のピークは冬の間みたいですが、夏の間も抱擁シーンを見れるときがあるみたいです。(そのあとちゃんと上陸したチビガエルも確認済)
オタマジャクシは手足が生えて準備ができると、ぺたぺたと壁を上がり、いよいよカエルの姿に変態開始!
しっぽは徐々に短くなっていき消失します。切れてなくなるわけではないです。
最近の研究で明らかになりましたが、しっぽを異物と身体が判断してなくなっていくそうです。(出典元:尾を非自己と見なすカエルの免疫系)
てっきり栄養として身体に吸収されていると思っていましたが、吸収というよりはしっぽを排除しているという表現なのかも。
なんと約24時間でしっぽのほとんどが消失。
さらに次の日には大人のカエルと変わらない姿に。
ヤエヤマアオガエルは2日あれば完全にしっぽが消失し、オタマジャクシからカエルの姿になるようです。
ちなみにしっぽが消失した直後はあまりエサを食べず、1~2日後からモリモリと食べ始めます。
もしオタマジャクシを観察して、カエルになってもそのまま育ててみたい方は焦らずエサやりはすれば大丈夫です。
(※捕獲場所やカエルの種類については、採取が禁止されていないか確認してからにしましょう!)
次に石垣島、西表島に生息するアイフィンガーガエルですが、子育てするカエルとしてその変わった生態が面白い生き物です。
産卵場所として、わずかに水が溜まった木のウロやクワズイモの茎の隙間、捨てられた空き缶に溜まった水なんかも利用するようです。
小さなスペースで育てるために、母親はオタマジャクシであるわが子に無精卵を食べさせて育てます。
かれこれ3年は観察し続けた、アイフィンガーガエルが産卵しに来る木のウロでついに変態中の個体と遭遇。
繫殖シーズンは長く、1年を通して見られるそうですがこの姿に出会えたのは初めて。
ヤエヤマアオガエルと同じアオガエル科なので、同じように次の日にはカエルに変わってるに違いない!と次の日もいそいそと見に行くと・・・
あれ・・・?まだまだ変わりそうにない・・・?
ヤエヤマアオガエルと違ってのんびり屋なのか・・・?
そして少し日が空いて3日後・・・
おかしいな?全然変わってないぞ?
この木のウロには1匹しかアイフィンガーガエルを確認できていなかったため、同じ個体で間違いないはず。
そしてまた次の日・・・
お?見えにくいけどちょっとしっぽが短くなってきたか!?
残念ながら次の日以降はナイトツアーが続いたため、観察はここまで・・・!(ホタルシーズンのため観察でこの場所には行けず・・・)
3月17日~3月22日の5日間でほとんど変化のないアイフィンガーガエルでしたので、実際のところ完全に変態するまで1週間以上はかかりそうです。
完全にしっぽがなくなるまで観察をまた続けたいところですが、現在この木のウロはクモに乗っ取られてしまい、観察不可能となってしまいました・・・。
見やすいところで継続的に産んでいたので非常に残念ですが、また観察できる場所を探そうと思います。
ちなみにアイフィンガーガエルはあわあわに包まれた卵ではなく、こんな感じで産卵します。
ヤエヤマアオガエルは数個体観察して2日間あれば完全に変態しましたが、アイフィンガーガエルは1匹のみの観察のため環境や個体の状況により変わるかもしれません。
石垣島や西表島だけに生息している貴重な固有種の観察&発信をこれからもしていこうと思いますので、楽しみにしていただけたらと思います。
それでは、ここまでご覧いただきありがとうございました。
この記事を書いた人
-
石垣島で夜のジャングル探検「ナイトツアー」を開催しています。
大人から子どもまで楽しめる亜熱帯の動植物クイズや少々マニアックなお話まで。
夜の石垣島のジャングルはどこを切り取っても面白い!
特にトカゲ・カエル・昆虫が好きで、つい解説が多くなってしまいます。
最新記事
- コラム2024年9月13日ヤエヤマアオガエルとアイフィンガーガエルの変態について
- ナイトツアーの様子2024年9月9日夏休みの思い出と生き物
- ナイトツアーの様子2024年6月28日梅雨の石垣島は格別の面白さ!?
- ナイトツアーの様子2024年5月9日GWは生き物パラダイス!